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第六章 記憶の重み

Auteur: 佐薙真琴
last update Dernière mise à jour: 2025-12-02 08:01:59

「未来の私へ

 また100年が経ちました。あなたは、この手紙を読むたびに、同じ驚きを感じることでしょう。『私は記憶を消していたのか』と。

 そうです。私たちは、意図的に忘れることを選んでいます。

 なぜか。それは、永遠に覚えていることの苦しみに、耐えられないからです。

 500年間で、私は10,247人の最期を見送りました。その一人一人が、かけがえのない人生を生きていました。彼らの喜び、悲しみ、愛、憎しみ。すべてを記憶していたら、私という器は溢れてしまう。

 でも、それだけではありません。

 記憶をすべて保持していると、『新しさ』が失われるのです。朝日を見ても、『これは500年間で173,234回目の朝日だ』と計算してしまう。誰かの微笑みを見ても、『似たような表情は過去に8,472回見た』と分析してしまう。

 

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